第2回 2026/04/13(月)ニュースレターとメールマガジン、構成作家と放送作家

似ているふたつの言葉。調べてみたら、意外な事実が発覚。
古川耕 2026.04.13
誰でも

 このニュースレターのタイトルは、「ラジオ構成作家12カ月」。

 決して「ラジオ放送作家12カ月」ではないし、先週会った人から「メールマガジン読みましたよ!」と言われたときには「そうなんです、始めたんですよ……ニュースレターを」と小声で言い添えるぐらいにはこだわりがあります。

 ニュースレターメールマガジン。構成作家放送作家。

 このふたつの違いを皆さんは知っているでしょうか?

 このニュースレターのお誘いを受けた後、調べてみたのです。

 このニュースレターの配信元、theLetterの運営をしている株式会社OutNowの濱本 至さんによると、もともと海外で「Email Newsletter」と呼ばれていたものを日本に持ち込んだ際(1997年頃)に「メールマガジン」と訳したのが日本におけるメールマガジン(メルマガ)の始まりだそう。

 つまり、このふたつは元来同じもの。辞書的な定義の違いも特にないそうですが、しかしこのふたつにはニュアンスの違いが確実にある。

読者目線からすると、メルマガは仕方なく登録されちゃったもの。ニュースレターはそのコンテンツが読みたくて登録したもの。(中略)まとめると、メディア目線でいうとニュースレターという独自コンテンツにしているかどうか、読者目線でいうとそのコンテンツを得たくて登録したのかどうか、がメルマガなのかニュースレターなのかの判断軸になるかと思います。

「ニュースレターとメルマガの違いについて」

 なるほど。

 であるならば、今あなたが読んでいるこれはたしかに「メールマガジン」ではなく「ニュースレター」です(よね?)。

 では、放送作家と構成作家の違いはどうか。

 これまた検索すると、「テレキャリア」という就職サイトにこんな記述を見つけました。

放送作家とはテレビやラジオ番組の制作において、番組の企画を考えたり、台本を作成したりする人のことをいいます。 (中略)構成作家が番組全体の骨組みを作るのに対し、放送作家は番組の中身を作る仕事という点に違いがあります。

「構成作家になるには?放送作家との違いやそれぞれの特徴・なり方を徹底解説!」

 なるほど〜。

 とはならないよ!!

 少なくとも筆者の見聞きしている範囲で、この意味で「放送作家」と「構成作家」を使い分けているラジオ番組は聞いたことがない。

 その証拠にと言うべきか、この記事にはこんな続きがあります。

ただし、この2つの職業にはっきりとした役割の線引きはなく、番組によっては、放送作家が番組全体の構成をすることもあれば、構成作家が具体的な演出などを手掛けることも少なくありません。番組スタッフの中では「作家さん」と一括りに呼ばれる場合もあります。どちらにせよ、1つの番組ができるまでには放送作家と構成作家の両方のアイデアが組み合わさっているのです。

(出典・同上)

 私はこれまで、 「放送作家」という肩書きには、テレビで芸能人と仕事をしているような華やかなイメージがあり、実際に自分がやっている仕事とはどうも乖離がある。なので、消去法的に、「(まぁ、構成作家、かなぁ……)」ぐらいな姿勢で名乗っていました。

 しかし、調べがついた以上、これからはそうはいかない。

 この事実を知ったのはこのニュースレターを始める直前でしたが(それまで調べようと思ったことさえなかった)、これからはさも昔から知っていた風に、確信に満ちた表情で、「構成作家ですが」と名乗っていこうと思います。これからよろしくお願いします。

 ×

 

 それにしても、ラジオ番組の「構成」って、一体なにをしてるんでしょうかね。

 これも結局、それぞれの番組や作家ごとに違いがあるとは思うのですが、あくまで自分なりにまとめると、こうです。

 トータルとして伝えたいテーマや事柄があり、それを理解してもらうために必要な情報を、どの順序で出すかを考える。さらに、その量と速度を適切に調節する。

 つまり、「情報の《順序・量・速度・質》のコントロール」。

 ラジオ構成作家の仕事の大半はこれに尽きると言っても過言ではありません。

 ラジオは音声だけで情報を伝達していくメディアです。視覚情報を用いた多層的な伝達ができず、単線的に情報を送っていくため、「話の順番」とその量の加減が重要となります。

 これはなにも、筆者が関わるTBSラジオ「アフター6ジャンクション2」のような情報マシマシの番組に限りません。

 どんな番組でも、たとえフリートーク中心の番組であろうと、この「構成」の作業は存在します。構成作家ではなく、喋り手自身が同じ作業を脳内でおこなっている場合もあるでしょう。

 またこの「構成」は、ミクロで見ればひとつの特集やコーナーの作り方の話ですが、マクロで見れば、番組全体のタイムテーブルの作り方、ひいては放送局全体の中での位置付けなどにも関わってきます。

 そして、ここまで「構成」を拡張したとき、その仕事はラジオに留まらず、映像メディアだろうと紙メディアだろうと、あらゆるメディアがやっていることに気づきます。

 雑誌や書籍業界だとこの作業は「編集」という言い方になるわけですが、実のところ、私は構成作家と編集者はほとんど同じ仕事をしていると思っています。

 もちろん最終的なアウトプットは異なりますが、出発点から途中までは完全に一緒。

 もともと雑誌畑から出てきた自分としては、だから「放送作家」よりも「構成作家」よりも、「編集の仕事」をしている、という感覚がもっとも強いのです。

 思い出すのは、編集者の大先輩、マガジンハウス取締役の西田善太さんからの言葉。

 2025年8月11日から14日まで、「アフター6ジャンクション2」では出版社のマガジンハウスとコラボした企画を4日間行いました。(マガジンハウス80周年特別企画「マガハとアトロクの一週間。」)

 3日連続の企画のうち、1日目は人気雑誌『POPEYE』 の特集。現編集長の町田雄二さんと西田さんを呼んで話を伺いました。そして2日目は今はなきガールズマガジン『Olive』の特集。こちらはOlive出身のエッセイスト酒井順子さんと愛読者だったしまおまほさんによる思い出話や総括。そして3日目は、マガジンハウスの礎となった伝説の芸能誌『平凡』について。ここでは『「平凡」の時代:1950年代の大衆娯楽雑誌と若者たち』という研究書を記した阪本博志さんに解説してもらいました。

 まとめて言えば、三雑誌三曜日、それぞれ違った切り口での紹介をしたわけです。

 この「構成」を受け、3日目のラストに出演した西田さんは、3日間がそれぞれ違ったアプローチになっていることを指摘したうえで、こんなふうに仰ってくれました。

「凄い構成を作り上げたな、と思います。この構成は雑誌的であり、ラジオ的でもある。感動すらしています。『喋れる人だけ呼べばラジオなんてできるじゃん』と思っていた自分を恥じます」(詳しくは聞きたい人はこちらのリンクを)

 これは、ここ数年で言われてもっとも嬉しかったHOME(褒め)言葉です。

 喋れる人だけ呼べば、ラジオなんてできる。

 書ける人だけ集めれば、雑誌なんてつくれる。

 本当にそうだろうか?

 もしたとえそうだったとしても、そこに適切な「構成=編集」が存在すれば、喋りや文章の才があろうかなかろうが、よりよいメディアをつくることができる。

 逆に、どんなによい喋り手や書き手が揃おうと、そこに「構成=編集」という《技術》がなければ、きっと長くは持たない。

 届けたい射程を、広く、長く、深く。

 そのための武器であり方法が、「構成=編集」なのです。

 少なくとも私はそう信じています。

 ……と、ここまで書いてきてなんですが。

 実は自分はこの「構成」が得意とは言えず、今でも毎回うんうん唸りながら四苦八苦しています。

 キャリアを重ねてどうにか人並みにできるようにはなりましたが、それでも思い入れの強い企画の時ほど肩に力が入ってしまい、独り善がりになりがち。この悪癖は文章でもそうで、実は前回のこのニュースレターも事前に読んで貰った奥さんにメタメタにだめ出しされました。

 みなさん、いつもご迷惑をおかけしております。

 ダメじゃん! こんな構成作家を使っているヤツは、いったいどこのどいつだ!?

 と思ったそこの貴方。

 この構成作家を長年使ってきた人間から、直接話を聞けるいい機会があるんですよ(巧みな構成)。

4.17[Fri]

「『ラジオ最強説』刊行記念イベント in大阪

 橋本吉史×古川耕「ラジオ”最強”制作秘話」

OPEN / 18:00 START / 19:00

会場:前売 ¥2,500 / 当日 ¥3,000

配信:¥2,500

 私と長年タッグを組んできた元TBSラジオ、現フリーのラジオプロデューサー橋本吉史さんとの対談イベント。

 彼が先月出した初の単行本『ラジオ最強説』。私も編集を少し手伝ったのですが、付き合いの深さ故、ついお互いのことを貶し合うようなコミュニケーションをしがち。THE有害な男性性。そんな悪しき習慣はやめて、お互い真正面から褒め合いましょう!というこのイベント。私は、いつも彼が番組を立ち上げるたびに心底「どうやったらこんなことができるんだ?」と感心していることがあるので、それを尋ねます。橋本さんは、なぜ私を構成作家として起用し続けるのか、構成作家としての私の特長を、彼なりに分析してくれるそうです。楽しみだなぁ!(橋本さん、及びこれを聞いた皆さんから訪れる万雷のHOMEが)

 そしてイベントと言えばもうひとつ。

4.19[Sun]

「中間報告会&翻訳トーク(YouTubeライヴ&アーカイヴ)」

4月19日(日)20時半~22時

出演:岸本佐知子、木原善彦、斎藤真理子、柴田元幸、西崎憲、松永美穂

 翻訳小説ファンとして、立ち上げ時からずっと楽しんでいた日本翻訳大賞。3年前に初めて司会のお手伝いをして、2年前から正式に実行委員になって運営の一部を担っています。選考委員は日本を代表する翻訳家の皆さんですが、私はそれぞれのお仕事のファンである以上に、それぞれのお人柄のファンでもあります。

 今回の日本翻訳大賞、最終選考に残った5作品はどれもヘヴィー級なので、選考委員の皆さんの解説はいつにも増してマスト度が高い。私も司会で少しだけ出演予定です。

【今週見たモノ触れたモノ】

◆4月12日(日)日本語教室ボランティア@蕨

 2023年10月から、私が住んでいる埼玉県川口市近隣の在日クルド人やその他の在留外国人たちに日本語を教えるボランティアをしています。

 ここ1年ぐらいはイベントの手伝いばかりだったのですが、この日は久しぶりに日本語教室へ行きました。

 足繁く通っていた2024年の頃と比べると、クルド人も日本のボランティアの面々もだいぶ顔触れが変わりました(もちろん馴染みの顔も何人かいましたが)。

 この日は、初めて訪れた小学校の新1年生の男の子を担当。

 彼は日本の幼稚園に通っていなかったらしく、読み書きがほとんどできない。そのため幼稚園児用のテキストで一緒にひらがなをなぞったり、線をひく練習をしました。が、早々に飽きてしまい、残り時間はキッズコーナーへ。気づけば同年代の少年たちもワラワラ集まってきて、あっという間にプチ託児所状態に。

 あがる奇声。巻き散らされるブロック。おもちゃの取り合い。小競り合い……。う、うるさっ! 子供の騒がしさに国境はない。日本語を教えるのとはまた別の疲れがある。ほかの皆さん、騒がしくてすいませんでした。

 男の子のひとりが、なぜか執拗に辛いフリスクを食べさせようとするのをかわしながら、お昼前に退散。最後にはみんなでハイタッチやハグをして別れました。

 おだやかな日曜日の午前に、いい風が入っていました。

 細く長く、隣人たちに手を差し伸べるこの活動を、静かに続けていこうと思っています。

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