第4回 2026/04/27(月) スペシャルな一週間を振り返る

ラジオ界に2カ月ごとに訪れる「スペシャルな一週間」。その裏側を日記スタイルでお届け
古川耕 2026.04.27
誰でも

毎年偶数月に行なわれるラジオの聴取率調査週間、通称「スペシャルウィーク」。この期間、ラジオ構成作家はいったいどんな日常を過ごしているのか? 本ニュースレター初の日記形式でお送りします。

◆4月19日(日)

この日は20時から日本翻訳大賞の中間報告会をオンラインで。出演は選考委員全員、すなわち岸本佐知子さん、斎藤真理子さん、柴田元幸さん、西崎憲さん、松永美穂さん、そしてゲスト審査員の木原善彦さん。司会進行は自分。数年前、一観客として見ていた時は出演者全員がzoomに繋がるまで10分以上かかっており、その様子を微笑ましく眺めていた。今はすんなり定時に始められるようになっている。成長。

トーク中、今回の最終選考に残った5冊を順番に紹介していきソローキンの『ドクトル・ガーリン』に差し掛かったとき。作中に登場する面妖なクローン(プーチンやトランプ、アベといったG8の元首脳たちのクローン。身体が尻でそこから手足が生えている)の外見について、岸本さんは『アフター6ジャンクション2』(アトロク)に出演した際、「ニコチャン大王みたいな感じ」と説明していたが(from『Dr.スランプ』)、木原さんが小説本文の描写をAIに読み込ませて描いたイラストを見せてくれた。画面越しに映る尻人間。思っていたよりずっとキモい。木原さんありがとうございました。

後半のフリートークでは、柴田さんの発案で「自分の翻訳の弱点について」語らう。みなさん自分の弱点についてはすらすらと話すが、人の弱点へのリアクションでは口が重くなる。そりゃそうか。そこから深い翻訳論に入っていくあたりも楽しい。一時間押して23時に終了。

◆4月20日(月)

今週のラジオは2カ月に一度の聴取率調査週間、いわゆる「スペシャルウィーク」。アトロクでは今年2月にサブスク解禁されて盛り上がったハロー!プロジェクトを題材に、「ハロー!プロジェクト30周年記念プロジェクト便乗プロジェクト」を敢行することに。我ながらいいタイトル。

初日の月曜は、リスナーのみなさんから募ったハロプロにまつわる作文を発表。正午から選定作業を始める。今年2月のスペシャルウィーク「<スーパー戦隊>50年間ありがとうウィーク」で初採用した「最大400文字の作文形式」を今回も採用。これでメール選びと構成が劇的に楽になった。いつかこのレターで書きたい。

放送では竹中夏海さんとでか美ちゃんがゲスト。竹中先生には今回のハロプロウィークについていろいろ相談に乗ってもらっていて、でか美ちゃんも竹中先生のご推薦。その広範かつ深いハロプロ知識に舌を巻いた。22時放送終了、放課後Podcastを収録して24時前にTBS退出。

◆4月21日(火)

お昼に一日遅れでニュースレターを配信。

15時TBS入り。アトロクの定例会議。昨日の反省と今夜以降のポイントを全員で確認。20時から放送開始。コンバットREC+“サミュL”森田秀一、そして南海放送とスタジオを繋いで杉作J太郎さんも生出演。後藤真希特集。昨日とはまた違ったグルーヴがある。杉作さんは普通に喋っているだけでなんであんなに面白いんだろう? ずっと聞いていられる。22時放送終了。サブで放課後Podcastの収録を聞きながら途中で退散。

◆4月22日(水)

午前から作業開始。今夜から二夜連続で行う「オール・ハロプロソング・ベスト30」。自分は今回、「一票しか入らなかったけどコメントが激アツな曲」紹介パートを担当。250曲以上の推薦コメントに目を通し、曲を聴き、作詞・作曲・発売年などの情報を調べていく。えらく時間がかかる。作業を繰り返していくうちだんだんエモくなってしまい、途中で思わず涙ぐむ。ハロプロのいい曲もいっぱい知った。

夕方にTBS入り。作業スペースで水曜担当の津野ディレクターと肩を並べて作業。ノートパソコンを黙々と叩いていると、隣の津野くんが突然天井を仰いで「最高だ!」と叫ぶ。上位陣の投票コメントを読みながら曲を聞いていたら感極まったらしい。特集成功の予感。

放送開始。解説ゲストはBase Ball Bearの小出祐介さんと音楽ライターの南波一海さんのPodcast『こんプロラジオ』コンビ。冷静かつ適確、それでいてしっかり熱のあるコメントが良い。南波さんが途中、ハロプロ理解度の高いリスナーたちを評して「分かり手」と表現したのがジワジワ来る。今後使っていきたい。この日のランキングは30位から16位まで。自分の投票した楽曲が入らず焦れていた水曜パートナー宇垣美里さんが、最後の最後に推し曲であるJuice=Juice『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?』がかかった瞬間、「キャァァァーーーッッ!」と絶叫。水曜は叫ぶ人が多い。

◆4月23日(木)

昨日に続いて投票コメントのまとめ、資料づくり。14時過ぎに自宅を出発。昨晩作ったベストハロプロ・プレイリストを聞きながら江戸川橋の古本屋アルスクモノイに立ち寄って本を預ける。このお店は開店した時からのお付き合い。店主のマキちゃんにコーヒーをご馳走になる。

20時から放送開始。「オール・ハロプロソング・ベスト30」後半戦。昨日のこいちゃん&南波さんに加えて月曜の竹中先生も合流。昨日より一段ギアが上がる。有名曲ばかりで否が応でも盛り上がる。また、投票コメントの中に「デモ」「戦争」といった単語がごく自然に出てくるのはやはりハロプロ楽曲だからだろうか。他のアイドルでも社会的な話は出てくるだろうが、それでもここまでにはならない気がする。ハロプロ楽曲には最初から日常と社会、ひいては政治が地続きであることが織り込まれていた。

すべてのランキングを紹介してスペシャルウィークも無事完走! 今回は何より各ディレクター&ADたちが頑張った。毎日の放送をしながら今回のようなイレギュラーで膨大な作業をこなすのは想像以上に大変なこと(投票フォームの準備、レギュレーションの設定、集計作業、曲の用意、資料の準備などなど…)。チームとしての成長を感じる。

◆4月24日(金)

正午に銀座へ。2週間前に注文していた新しい眼鏡を受け取る。ここ3年ぐらいずっと眼鏡を新調したいと思っていたが、いいフレームが見つからずに長年買いそびれていた。今回、眼鏡診断をやっている店があると知り、早速相談して店員さんの薦められるままにフレームを選んでみた。が、いざ受け取ってみると……あれ? なんか思ってたんと違う……な……? 分厚いレンズが入ると眼鏡って印象変わるね。レンズの見え方にも慣れない。覚束ない足取りで駅まで戻る。もやもやした気分のまま銀座インズ3のロメスパの店「ジャポネ」へ。おいしい。帰宅途中、仕事でミスをやらかしていたことが発覚。急いで帰ってリカバリー作業に注力。

◆4月25日(土)

朝8時過ぎに自宅を出て、都内某所で開かれる日本翻訳大賞最終選考会へ。去年はじめて運営委員として立ち合ったが、それはそれは心躍る時間だった。今年はゲスト審査員の木原善彦さんもリモート参加。議論は白熱。大賞が決定したのが13時過ぎ。去年同様、選考委員の皆さんと近所の焼き肉屋で打ち上げ。

午後2時。アルスクモノイで一昨日預けた本の代金を受け取る。友人の詩人・小林大吾がいたので少しだけお喋り。カウンター席を借りて急ぎの作業しようとしたが、持ち歩いているMacBookAirではその作業出来ないことが判明。昨日に続いて慌てて帰宅。なんとか作業を済ませる。

夕方過ぎに妻と外出。シネマチュプキ・タバタにて映画『時のおと』を鑑賞。21時半過ぎに帰宅。

◆4月26日(日)

10時から某研究団体が主催するオンラインセミナーを受講。難民・移民へのメンタルケアの研修、そして支援者たちのメンタルヘルスについての調査も兼ねたものだとか。トラウマインフォームドケア(TIC)という考え方を初めて知る。一度聞いただけではとても理解しきれず、また学んでみたいと思った。

【今週見たモノ触れたモノ】

◆小説『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史』上・下 R・F・クアン著 古沢嘉通訳 (東京創元社)2026年2月21日読了

日本翻訳大賞の読者推薦で見かけて気になっていたので読んだ。『ハリー・ポッター』風の寄宿舎物ファンタジーとしてわくわくしながら読み進めていくと、中盤以降、怒濤の展開にグイグイ飲み込まれていく。主人公の男女4人は大学生。ハリーポッターたちより歳上だが、恋愛要素がほとんど描かれないため読み心地はかなりYA的。そして本作が凄いのは、そのファンタジー設定。舞台は大英帝国が覇権を握る19世紀。英国が蒸気機関の代わりに産業革命を起こした動力機関は、「翻訳の魔法」。ふたつの言語における単語の意味のずれ──日本語での「お湯」と英語での「Hot Water」、そのニュアンスの違い──がエネルギーを生み出すという。どうしてこんなこと思いつくん???? この設定により本書は英語帝国主義、引いては英国による植民地支配への批判と、それに抗う者たちを描いたポストコロニアル小説、もっと言えば革命小説的な様相を帯びていくことになる。

バベルとは、世界中から非主流言語を扱う少年少女たちを集め、言語エリートへと教育していくオックスフォード大学王立翻訳研究所のこと。そこに通う中国人の少年ロビンと仲間となるラミー、ヴィクトール、レティ。この4人の青年たちの行く末は実際に読んで見届けて欲しい。終盤に差し掛かったとき、ある用事で移動中だったのだが、途中で止められなくなってしまい、銀座の交差点の壁際に立ち尽くしてそのまま最後まで読んだ。

ネビュラ賞長編部門、ローカス賞ファンタジー長編部門受賞、『SFが読みたい! 2026年版』海外編1位。「10代がえらぶ海外文学大賞」二次投票候補にも残ってます(自分も推薦した)。

◆映画『時のおと』 2026年4月25日 シネマチュプキ・タバタにて鑑賞

「2019年の長編監督デビュー作『轟音』で国内外から注目を集めた俳優・映画監督の片山亨が、故郷・福井県の5つの街で1年かけて四季を巡りながら撮りあげた映像詩。」(映画.comより)

今年1月公開。実は一度見ていて今回は二度目の鑑賞。福井の街を舞台に、そこで暮らす老若男女を静かに描いた4話からなるオムニバス。俳優たちが出演する歴とした劇映画であるにも関わらず、地元の方たちも多数出演し、撮影も演出もかなり控えめなので最初はドキュメンタリーかと思ったほど(二度観ると実はかなり精緻にストーリーテリングされていることも分かる)。4話すべて良かったが、最後の話に出てくる水菜農家の老人「ミツハシさん」(三嘴武志)が凄かった。素人にしては演技がうますぎるし、俳優にしてはあまりに「普通のおじいちゃん」過ぎる。途中から目が離せなくなってしまった。劇場パンフを読んでみたら、実際に農家を営む80才の方で、この話で主演した柳谷一成さんは一カ月住み込んで農作業を手伝っていたという。いざ撮影を始める段になり、片山監督がふたりと会ったら、その関係性が深くなり過ぎていたため、「自分の言葉は三橋さんの言葉を超えられない」(プロダクションノートより)と思い、三橋さんには台本を渡さず自由に演技してもらったという。どえらいことしてる。

そして実は、今作の映画音声ガイド(音声描写)で我が家の長女がナレ—ションを担当している(1話と3話)。親の欲目かもしれないが、作品内容に寄り添う良いナレーションだった。

【お知らせ】

4月17日に大阪ラテラルで行った橋本さんとのトークイベント、アーカイブ購入のラストチャンスが近づいてます!(5/1(金)まで)

おかげさまで好評です。『アフター6ジャンクション2』『ウィークエンド・シャッフル『生活は踊る』『ザ・トップ5』のリスナーなら楽しめるはずだし、メディアに関わる人にもおすすめ。あと、熊崎風斗アナをめちゃめちゃホメてるよ!

『ラジオ最強説』刊行記念「ラジオ”最強”制作秘話」

【出演】橋本吉史(ラジオプロデューサー、『ラジオ最強説』著者)、古川耕(放送作家)

チケット料金は¥2,500。購入してから2週間視聴可能なので、GWでお時間あるかたはぜひ!

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